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大阪高等裁判所 平成5年(ネ)3295号 判決

控訴人

右代表者法務大臣

松浦功

右指定代理人

川口泰司

外三名

被控訴人

山田義一

外三名

右三名訴訟代理人弁護士

坂元和夫

被控訴人

山田幸一

主文

一  本件控訴を棄却する

二  当審における請求の趣旨の訂正に基づき、原判決主文第二項を次のとおり改める。

三1  被控訴人山田幸一を除く被控訴人らと控訴人との間で、原判決別紙物件目録(1)記載の土地と、(一)その北側の道路敷との境界が同図面記載イ、ロ、ハ、ニの各点を結ぶ直線であること、(二)その南側の河川敷との境界が同図面記載ホ、ヘ、トの各点を結ぶ直線であること、をそれぞれ確定する。

2  被控訴人山田幸一とその余の被控訴人らとの間で、原判決別紙物件目録(1)記載の土地と、(一)その北側の道路敷との境界が同図面記載イ、ロ、ハ、ニの各点を結ぶ直線であること、(二)その南側の河川敷との境界が同図面ホ、ヘ、トの各点を結ぶ直線であること、をそれぞれ確定する。

四  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一  申し立て

(控訴人)

一  原判決中、控訴人敗訴部分を取り消す。

二  被控訴人山田幸一を除く被控訴人らの訴えをいずれも却下する。

三  訴訟費用は第一、二審とも前項記載被控訴人らの負担とする。

(被控訴人山田幸一を除く被控訴人ら)

一  主文一、四項同旨

二  本訴請求の趣旨を主文三項のとおり訂正する。

第二  主張

(被控訴人山田幸一を除く被控訴人らの請求原因)

一  原判決別紙物件目録(1)記載の土地(以下「本件土地」という。)は、山田熊吉の所有であったが、同人の死亡により被控訴人らが同人を共同相続した結果、現在被控訴人らの共有(持分各四分の一)に属する。

二  本件土地の北側は控訴人所有の道路敷に、南側は同所有の河川敷にそれぞれ隣接しているところ、本件土地と右道路敷の境界は原判決別紙図面記載イ、ロ、ハ、ニの各点を結ぶ直線であり、本件土地と右河川敷の境界は同ホ、ヘ、トの各点を結ぶ直線である。

三  被控訴人山田幸一を除く被控訴人らは、本件土地につき、同山田幸一を相手方として、京都家庭裁判所に遺産分割審判を申立てているが、本件土地の隣地との境界が確定しないため、分割の審判ができない。

四  そこで、被控訴人山田幸一を除く被控訴人らは、同山田幸一と共に共同原告となって控訴人を被告として右境界確定の訴えを提起しようとしたところ、同山田幸一がこれに同調しなかったので、やむなく、控訴人のほか同山田幸一をも被告として、本訴を提起したものである。

(控訴人の認否)

一  請求原因一、三項の事実は不知。

二  同二項の事実は認める。

(被控訴人山田幸一の認否)

請求原因一ないし三項の事実は認める。

第三 証拠

原審記録中、書証目録記載のとおりである。

理由

一  請求原因四項の事実は、控訴人及び被控訴人山田幸一の明らかに争わず自白したとみなされるところである(弁論の全趣旨によってもこれを認めうる。)。

二  ところで、土地の共有者が隣地との境界確定を求める訴えは、固有必要的共同訴訟であり、共有者全員が原告となってこれを提起すべきものであるが、共有者のうち、右訴え提起に同調しない者があるときは、その余の共有者(以下「原告」という。)は、隣地所有者(以下「本来の被告」という。)のほか、非同調共有者(以下「二次被告」という。)をも被告として右訴えを提起することができ、この場合、訴訟の実質は、原告、本来の被告、二次被告の三者間の三面訴訟となると解すべきである。そして、この三者の手続の規律は、利害関係に応じて弾力的に処理されるべきであり、たとえば、本来の被告の自白を否定する理由はないと解される。そして、二次被告は、右訴訟で決まったことを、原告及び本来の被告に対してもはや争えないと解すべきである。

三 これを本件についてみると、本訴は、被控訴人山田幸一を除く被控訴人らを原告、控訴人を本来の被告、被控訴人山田幸一を二次被告とする実質三面訴訟であるということができる。

そして、一般に、三面訴訟においては、当事者の一人が他の当事者のうちの一人に対してのみ上訴しても、事件の全部について確定が妨止され、事件はその全部が上訴審に移審するが、この場合、残りの当事者は、民訴法六二条二項の準用により、被上訴人としての地位に立つと解するのが相当であるから、本来の被告のみが控訴した本件において、二次被告たる山田幸一は被控訴人としての地位に立つというべきである。

四  請求原因一項の事実は被控訴人山田幸一との間で争いがなく、控訴人との間では甲第一号証及び弁論の全趣旨によりこれを認めることができる。同二項の事実は全当事者間に争いがない。同三項の事実は被控訴人山田幸一との間で争いがなく、控訴人との間では弁論の全趣旨によりこれを認めることができる。

五  以上によれば、控訴人及び被控訴人山田幸一との間で、本件土地と、(一)その北側の道路敷との境界が原判決別紙図面記載イ、ロ、ハ、ニの各点を結ぶ直線であること、(二)その南側の河川敷との境界が同ホ、ヘ、トの各点を結ぶ直線であることのそれぞれの確定を求める。被控訴人山田幸一を除く被控訴人らの控訴人及び被控訴人山田幸一に対する、当審における訂正後の各請求はいずれも理由があるというべきであるから、これを認容すべきである。

六  よって、本件控訴は理由がない(右各請求の当審における訂正により本件控訴は理由がなくなった。)のでこれを棄却し、右各請求が当審において主文三項記載のとおり訂正された旨を明らかにし、民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官富澤達 裁判官古川正孝 裁判官塩川茂)

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